夏の貝といえばアワビですね。
生で食べるならさっぱりと水貝で。
八幡鮨では生でお出しすることはほとんどありませんで、ほぼ毎回煮貝にしてお出ししています。
水とお酒だけで煮ること約4時間。
身が柔らかくなったところで、味付けの醤油、砂糖などを加えて調えて。
これに飾り包丁をして握り、煮詰めをサッと刷いてお出しします。
握りの上には、薄くスライスしたアワビの肝もあしらうといいですね。
ところで、アワビの殻はどんな形をしていますでしょう。
表側は、海中で天敵から身を守るため、岩などと同系の色や形をしています。
しかし剥いたあとの裏側は、虹色に輝くきれいな銀色なんですね。
この殻が洋服のボタンや工芸品になるのをご存知ですか。
これは四代目に聞いた話なのですが、昔はボタン屋さんがすし屋をまわって、ボタンの材料になるアワビの殻を買いに来ていたそうです。
だいたい月に一度の割合で、「アワビの殻ありますかあ」と言いながら。
四代目が若い頃からということは、戦前からそうなのでしょう。
プラスティック製のそれが、アワビのそれに取って代わるまでといいますから、昭和40年代あたりまでは来ていたのでしょうか。
貝で出来たボタンてきれいですものね。
どうせ殻は処分してしまいますから、ボタンや螺鈿細工などにもっともっと活かしてほしいものです。
八幡鮨のような街場のすし屋も含めた、そのようなサイクルが出来上がるといいですね。
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