憧れの黄昏急行(前編)

少し前の話になりますが、6月の18・19日と連休させていただき、その休日を利用してぶらり一人旅をしてきました。
大阪-札幌を結ぶ寝台特急トワイライトエクスプレスというのに乗ってきました。今回は上り列車で札幌から京都までの乗車です。
飛行機で昼ごろ札幌に着き、間もなく車上の人に・・14:05、静かに発車したトワイライトEXPは心地良いバウンドとレールの響きを車内に伝えながら初夏の北の大地を駆けていきます。大地の広さに比例してゆっくりと移り変わってゆく車窓には、草を食む放牧の馬や、無人の小さな駅舎、太古の昔から変わらないであろう原生林などが、あらわれては消え、眼を愉しませてくれます。有珠山や昭和新山、駒ケ岳そして大沼も北海道の雄大さを見せつけてきます。
夏至間近の北海道では午後8時近くでなおまだ薄明るく、江差線を行く列車からは津軽海峡の彼方に本州が望めるほどです。そしてこの列車のメインイベントのひとつ青函隧道に突入です。ひときわ長い汽笛とともに薄闇から闇に景色もかわります。永い年月と幾多の難関の末に開通した隧道をこのような快適な乗り物に乗って通り抜けるのは、少しの後ろめたさを感じますが、享受することもそれに報いることかな、などと取り留めのないことを考えてしまいます。
再度の長声を張り上げるとそこはもう内地。しかし夜の帳が降りた津軽半島はトンネルの中との区別がつきません。青森で機関車を付け替えた夜行寝台は一路日本海側を南下し始めます。時計を見ればもう午後10時。洗面して、備え付けの夜着に着替えてベッドにもぐりこみます。言い忘れましたが今夜のねぐらはB個室寝台という廉価なお部屋。しかし安いと言っても個室である以上、乗客は一国一城の主。一人旅の極致です。
横になりカーテンを開けたまま暗い夜空をぼんやり眺めるのもいいものです。闇の中に水銀灯の光が尾を引いて流れ去り、田圃の畦道の踏み切りが間延びして入り込んできたり・・レールの小気味よい響きに身をゆだねていると、いつしか眠りにおちてしまいます。
秋田や酒田など、昼間は活気に満ちたこれらの都市も今は寝静まっています。そんな街まちを白河夜船ならぬ白河夜汽車で通過します・・・・・憧れの黄昏急行(前編)憧れの黄昏急行(前編)憧れの黄昏急行(前編)

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