長くお店をやっていると、普段なにげなく使ったり、接していたりするものが、実はもう何十年と使い込んできた物だったりします。
例えば、お料理やまかないを作るためのフライパンや、ネタを仕舞うバットなどは50年ほども前から使い続けていますし、お米を量る一升枡に至っては100年近くも経っています。
しかし、それらは特別に保管するわけではなく、日常ふつうに使っています。
そんな年季が入った物の中で、八幡鮨の象徴的なものがあります。というか「います」と言ったほうがいいでしょうか。
それは、招き猫。
カウンターの端にちょこんと座るこの猫ちゃんは、戦後すぐからいますから、もう60歳を軽く超えています。
戦後間もない頃、行商のおじさんが売りにきたそうです(そのおじさんも生きていれば120歳以上だろうとのこと)。
以来お店の片隅に座り、毎日毎日八幡鮨とお客様を見守っていてくれたのでしょうね。
そう思うと自然と情が湧いてきます・・・
今は全体的に白っぽい体ですが、元は白い体に黒いブチだったそうです。
40年ほど前、四代目が猫ちゃんを綺麗にしようと、濡れふきんで磨いてあげたら、その黒いブチがほとんど剥げてしまったそうです。
まあ、今のほうがどことなく時代を感じていいかもしれませんね。
それにしても、むかしの招き猫は、今より猫らしい顔をしています。
そういえば、この猫ちゃんは名前はなんて言うんだろう?
———「我が輩は招き猫である。名はまだ無い・・・」
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