炊きあがったしゃりを入れておく道具を「お櫃」と呼んでいます。
冬ならしゃりが冷めないように、夏なら炊きたてのしゃりが蒸れないように気を遣います。
写真は、戦後までどこの寿司屋でも使っていた、夏用のお櫃です(いちばん下の写真は現在のステンレス製のもの)。
しゃりが炊きあがったあと団扇でよく冷まし、せともののお櫃に移します。
さらしでも被せて蒸れないようにしていたのでしょうね。
四代目の昔話になりますが、四代目が若い時分、修業先に「音さん」という大先輩の職人さんがいたそうです。
音さんは明治33年生まれ。
8歳のときに京橋のすし幸さんというところに丁稚にだされたそうです。
そのときの親方が大層厳しい方だったようで、音さんが瀬戸もののお櫃に入れたしゃりを親方のところに持っていくと、親方ひとくち摘むなり「こんな不味いしゃりが使えるかっ!」と言ってお櫃ごと地面に叩きつけて割ったそうです。
いまも寿司屋の修行は厳しいかもしれませんが、むかしは相当な物だったのでしょうね。
今回はお櫃の話から、四代目を通して、明治時代の職人さんのことまで聞くことができました。
勉強になりますねえ。
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