日本の正統派フランス料理の老舗、マキシム・ド・パリが今月いっぱいで閉店になります。
銀座のレストランだけでなく、ミルフィーユで有名な洋菓子店もすべて閉店ということだそうです。
以前から一度は訪ねてみたいと思っていながら、なかなか機会がなかったのですが、最後の思い出にと行ってまいりました。
飲食の表象学でご著名な福田育弘教育学部教授ご夫妻とご一緒させていただきました。
SONYビル地下3階のレストランは、赤を基調とした重厚なお店です。
内装はどこをとっても手が込んでいて素晴らしく、文化財として遺したいほど。
席に案内していただいて、まずはシャンパーニュで乾杯です。
福田先生お勧めのシャンパーニュは、軽やかに爽やかに喉を通り抜けていきます。
この日はコースではなく、アラカルトで注文することに。
五代目は、前菜にフォアグラのテリーヌを、途中スープにオマール海老のビスク、メインには小鴨を、そしてデザートにクレープシュゼットとミルフィーユをお願いしました。
フォアグラのテリーヌはものすごくキメが細かく、密度が高い、とても贅沢な仕上がり。
人生で一番美味しいテリーヌです。
ビスクはスープというより、濃厚なソースといった風情で、ブイヤベースのスープをイメージしていた五代目にとってかなりの衝撃。
いよいよメインの小鴨の登場です。
今回 小鴨を選んだのには訳がありまして、昔風に客人の目の前での取り分け(デクパージュ)が見たかったからにほかありません。
いまでは、料理は厨房で、個別に盛り付けてから運ばれてきますが、昔は主人が客人の前で切り分けていたものだとか。
そういったことができるのがマキシムの素晴らしいところですから、それを見ない訳にはいきませんね。
調理された小鴨をワゴンに載せて、テーブルのまえに来てくれます。
取り分けてくれるのは女性給仕の原さん。
デクパージュがやりたくてマキシムに入ったという素敵な方です。
彼女の見事なナイフ捌きで、瞬く間に小鴨を切り分けていき、それがその場でお皿に盛り付けられます。
甘い桃のソースをからめ、黄桃のソテーと一緒に食べると、その美味しさに頭がクラクラするほど。
仕上げは、また彼女によるクレープシュゼットのパフォーマンス。
美味しいクレープシュゼットが出来るまでの工程は、まさにプロフェッショナルの仕事で、芸術家が作品を作り上げていくのに似ています。
マキシムの定番デザートのミルフィーユを楽しむ頃には、店内に残っているお客さんもほとんどいなくなり、折角ですから内装の写真を撮らせていただくことに。
いろいろな席に座り、違った角度から店内を見渡せば、初めて来たお店なのに、フラッシュバックのように、歴史が目の前に現れてゆくような気持ちになります。
このままこれからも変わらずあり続けてほしいと心から思うお店、Maxim’s de Paris。
せめて内装だけでもどこかに移築して、後世に遺していってほしいものです。
長い間ありがとうございました。
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