春めいてきたこのごろ、街中でスズメを多く見かける季節になってきましたね。
スズメといえばいまから20年ほどまえですが、五代目は家でスズメをヒナから育てたことがあります。
巣から落ちたのでしょうか、お店のすぐ近くの道端に2羽のスズメのヒナが落ちていました。
それは人通りの多い歩道上で、そのままにしておいたら踏み潰されてしまうと思い家に連れて帰りました。
日当たりの良い部屋の床に新聞紙やティッシュペーパーをたくさん重ねて寝床を作ってやり、仕事で使う大きなプラスチックの深いザルを被せてそこに住まわせました。
野生のスズメのヒナなど育てたことなどありませんし、今のようにインターネットで調べることも知らない頃ですから、飛べるようになったら放してやるつもりで手探りで育てることにしました。
ヒナは何より栄養を摂ることが大事ですから、まずぬるま湯を飲ませてあげましたが、2羽のうちの1羽はすぐに死んでしまいました。
残る1羽は水も飲んでくれ、牛乳に浸したパンも食べてくれるようになったのでひと安心。
それから朝昼晩と牛乳やパンを中心に食べさせる日々です。
ときには五代目が公園に出掛けていって虫やミミズなどを獲ってきて食べさせ、自然界の味も覚えさせます。
そうこうしているある日、窓の外にスズメが飛んできて中の様子を伺っているのに気づきました。
この子の親だと直感したので、ザルのカゴをベランダに出して親子の対面をさせてあげます。
それからというものほぼ毎日来るようになり、昼休みなど五代目が部屋にいるときはカゴを外に出して、その上に重しをおいて万一にもカラスなどに攻撃されないように見守りながら対面させてあけます。
スズメの言葉は分かりませんが、きっと何かを話しているのでしょうね。
微笑ましい光景でした。
スズメの成長は早いもので、いつの間にか飛べるようになり、カゴから出しては部屋の中で飛ぶ練習をさせる日が何日か続きます。
十分に元気よく飛べることを確認して、いよいよ野生に帰す日が来ました。
いつものように親スズメが来たので、この日はヒナを掌の中に入れてベランダに出ました。
そして親に「あとはよろしくね」と言いお別れします。
2羽揃ってすぐに飛び去っていきました。
無事に育てた達成感と、一抹の寂しさを感じながら見送ったものです。
これには後日談がありまして、巣立ちからしばらくしたある日、ベランダに2羽のスズメがやってきました。
スズメを個別に識別なんてできませんが、これはあの親子に違いありません。
それからというもの毎日のように遊びに来てくれました。
スズメの恩返しという訳ではないでしょうが、この親子に五代目の気持ちが通じたのでしょう。
その翌年も同じように来てくれましたっけ。
もう遠い昔の話ですが、いまでも街中でスズメを見ると、あのときのことが思い出されます。