子供から大人まで、はたまた外国からのお客様まで大好きな玉子焼き。
今の八幡鮨では四代目考案の特製玉子焼きの出汁を使って玉子焼きを焼いています。
このタイプのものは昨今ではコンビニでも「お寿司屋さんの玉子焼き」とか「お寿司屋さんのギョク」なんて言って売られてもいますね。
お寿司屋さんのなんて言われていますが、戦前にこのタイプのものは寿司屋ではなかったと思います。
この玉子焼きが寿司屋で使われるようになるのは戦後のこと。
それ以前は卵は大変貴重なものですから、玉子焼きを作るときはカサ増しとして白身魚や海老や山芋などをすり身にして卵に混ぜて焼いていたのです。
現代おいて卵は価格の優等生などと言われ(世情で随分と値上がりしましたが)、逆にカサ増しに使っていた魚介との価格の逆転が起こったために、戦前までの玉子焼きはあまり見かけなくなりました。
それに加えて、魚介を混ぜた玉子焼きはとても手間がかかるのですね。
作り方の話になりますが、八幡鮨の場合まず鯛と海老を分厚い切り身の状態から摺鉢で潰すところから始めます。
そこにおろした山芋を加えて、粘り気が出て滑らかになるまで擂り粉木で擂るのです。
最後に卵を割り入れ、砂糖や塩、味醂などを混ぜ合わせてから専用のフライパンに流し込みます。
ここまでざっと1時間。
難しいのはここからでして、近くを通れば消えてしまうほどのトロ火で気長に焼いていきます。
たまごの両面に火を入れるので、これに大体40〜50分。
仕込みから焼き上がりまで2時間ほども掛かるのです。
と言ってもこれはあくまでも厚く焼いた場合で、昔は薄めに焼いていたそうですから、ここまで時間はかからないにしても、今の(戦後の)厚焼き玉子からすると非常に手間が掛かりますね。
そんなわけで戦後の高度経済成長などで時間の流れも早くなり、簡単で美味しい今の玉子焼きがあっという間に寿司屋の間に広まりました。
広まった理由というのは、むかし五代目がお世話になっていた日本料理の志の島忠(しのじまちゅう)先生から教えていただいたところによると、お蕎麦屋さんでおつまみに出していたこの玉子焼きを見たある寿司屋さんが、これは寿司屋でも使える!と言って取り入れたのが始まりだとか。
今でも高級なお店やこだわりの寿司屋さんでは昔ながらの玉子焼きを焼いているところが多いようです。
八幡鮨でもご要望があればお作りしますが、その時は何日か前にご相談ください。
そうそう。今の玉子焼きをギョク(玉)と呼ぶのも昔の職人さんからすると抵抗があるようです。
ギョクってえのは昔のものを指すのであって、今どきのものは玉子焼きってんだ。
と、随分むかしに言われました。
五代目の世代になると、同じ玉子ですから、どっちもギョクでいいような気がしますけど。
いずれにしても八幡鮨では精魂込めて玉子を焼いてますので、どうぞお楽しみくださいね!
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